失敗の本質を読破したった

本の紹介

大東亜戦争における日本軍の敗戦を取り上げ、その失敗にはどんな原因があったのか、それは本質的には何がダメなのかを解説するという本。非常に面白いアプローチであり、結果的に近代的な日本の企業においても転用されている日本軍の考え方が、このままで大丈夫なのかを問うというもの。

なぜ手に取ったのか

僕はソフトウェアエンジニアであるがフリーで仕事を請けているのではなく、一つの企業に属して仕事をしている。この企業がかなり大規模で○千人が所属する企業の一人なのだが、それと同じような規模のグループ会社も数社存在している。そして兼務していたりミラー組織として横に展開するような関係を持っている。かなり大きな組織に属している身として、組織における失敗とはなんなのか、アンチパターンは何かということが気になった。

本の感想

内容の感想とは違うが、まず最初に思うのが個人的には本を読むのに一苦労したというのが大きい。最後はやっと読み終えた〜という感じであった。なぜかというと、本自体が少し古いこともあって現代人の読みやすさには合っていないのと、取り扱う内容が戦争ということで少し難しい漢字が出てきたり、理解が難しい内容があったりしたためだったと思う。が、全然読めないわけではなく、ただ単に読み終えた時の達成感が今までの本と違って大きかったということである。

本書の中では失敗の本質は多く上がっていたが僕が気になったのは3つ。

  • 目的が曖昧で多義性がある
  • 戦略策定が帰納
  • 人的評価がプロセスとやる気

これらのことは日本軍や大企業のような大きな組織に言えることばかりではなく、一つの事業やその中のプロジェクトチーム、はたまた個人にまで同じことが言えることだろうと思っている。

失敗①:目的が曖昧で多義性がある

企業は将来のビジョンを掲げ、プロジェクトチームにはミッションがあり、個人には達成するべきタスクが存在している。しかしこれら大から小までの組織の目的が曖昧であれば、その下に属する組織の目的がズレ、向かうべき方向がわからなくなりまとまりがなくなって、戦争であれば負け、プロジェクトであればミッション未達成となってしまう。

失敗②:戦略策定が帰納

帰納的の対義語として演繹的という言葉がある。僕はこの2つがなかなか頭に入ってこなかったので、帰納的を場当たり的、演繹的を軸を持っている、という風に読み替えて読んでいた。何か戦略を決めるときに、何かの軸を持ってその軸に沿った戦略を策定するべきところを、軸が持たないせいでその場しのぎの、場当たり的な戦略策定になってしまったというのが失敗になる。これは失敗①の目的が曖昧というところからも繋がってきている。個人としても何かを決める際には何を持って決めるかの軸がなければ決められなく、とりあえず場当たり的に決めて進んだところで失敗するような気しかしないので、まさにこれはアンチパターンの一つだと思うし、それを確かめられた。

失敗③:人的評価がプロセスとやる気

これは社会人になってから先輩によく言われたことだった。僕は高校の時スポーツをしていたが、スポーツで勝つことはもちろん大切だが、それに至るまでの努力ややる気を評価してもらって試合に出させてもらえていたような感覚もあった。そのため社会人になってからも努力ややる気を見せていたが、それだけではダメで結果を出さなければならない、と教え込まれた。努力ややる気ももちろん必要だが、最終的には結果にコミットしなければ組織が前に進んだとは言えないので当然のように、今は思える。

まとめ

日本軍の失敗を糧に組織が成功するために、少ない記録から戦争で起きたことを詳細に洗い出し、そこから分析を行ってこの本を書いてくれた著者に感謝を言いたい。多くの失敗はアンチパターンとして社会や組織に根付いているように思えたが、日本軍がそうだったように失敗したくて失敗しているわけではなく、日本人として文化や性格的に失敗の本質に向かいやすいという性質を知って、組織を動かしていきたいと感じた。